NYでのゴスペル体験


 教会の中に響いた第一声はテナー、ここでいきなりカウンター・パンチを食らった。
『Addicts Rehabilitation Center(麻薬中毒患者リハビリ・センター)の患者た
ちによるゴスペル』という事前情報から想像していた声とはかけ離れた迫力で、
信仰に対する私の認識の甘さを実感する前に、もう涙がこぼれていた。

 ここのクワイアはアカペラで、25人ほどで編成されているが、
圧倒されるほどのボリュームで迫ってくる。
リードやボイス・パーカッションも含めクワイア全員が、全身で歌い、賛美している。

 どこか、アフリカの乾いた大地を想像させるようなメロディー、
ゴスペル独特のこぶし、伸びやかな声。
歌の間は泣く人あり、感謝の言葉を叫ぶ人あり、
手を叩きたい人は叩き、まさに「何でもあり」、
これが信仰によってドラッグから立ち直ろうとしている彼等の賛美の仕方なのだ。
 Thank You Lord! Hallelujah!
クリスチャンでない私に、その本当の重さはわからないかも知れないけれど、
だからこそ、彼等のひらすら純粋な姿に胸がふるえる。

 最近日本でもゴスペルが脚光を浴びていて、
宗教的な意味から教会での賛美に抵抗のある人でも、講座や音楽教室、
ワークショップに参加したり、海外からもクワイアがやってくるようになった。
でも、それらのほどんどはゴスペルをエンターテイメントとしてとして捉えていないだろうか。
しかもブラック・ゴスペルに限って。

 本物は、背景を何一つ知らなくても、人の心を揺さぶる。
でも、もしブラック・ゴスペルを素晴らしいと思ったなら、
是非、その育って来た背景を知って欲しい。

 奴隷として連れて来られ、
夫婦であっても家族であっても引き裂かれ、売られていったアフリカン。
彼等に与えられた唯一の希望が信仰であったことを理解して欲しい。

教えに従って支配されていた過去を許し、
公民権を勝ち取った彼等は(キング牧師の演説はきっとご存知ですね)、
相変わらず厳しい現状の中、あきらめに近い感情を抱きつつ、
それでも信じ続けることで今日を生きている。
 民俗の歴史を誇りに思い、自分たちの文化を大切に守って来た彼等が、
彼等なりの方法で神を賛美する、
それがハーレムで触れることのできるゴスペルだと私は思う。

 そうそう、前述「ARCクワイア」以外に、
日曜礼拝で触れることのできるものとして紹介しておきたいものがある。
 ハーレムの教会の多くは、今は生産されていなくて、
他ではあまり巡り合えない「ハモンドB3オルガン」を所有している。
コレなんだな、ゴスペルは!
 それから、タンバリンの叩き方も見て欲しい。
クワイア以外にも、タンバリン持参でやってくる信者の方がチラホラ。
カッコイイんだ、またコレが!

 ゴスペルという音楽が、人々の相互理解のきっかけとなるならば、
そこに宗教的な意味合いが存在しなくても、
それはそれでいいのではないだろうか。
でも、教会に行くのならば、その時は信者の方々と一緒に賛美するべく、
服装にも注意して欲しい。
また、個人で行くにしても、
ゴスペル・コンサートに行くのではないということを認識した上で、
入口で一言断ってから入りたい。
大丈夫、必ず暖かく迎えてくれるから。
 途中で献金のお皿やカゴが回って来るが、旅行者(訪問者)であることをわきまえて、
教会に対する感謝の気持ちを表そう。



THE ARC GOSPEL CHOIR(水曜日)
ツアー 英語
http://www.harlemspirituals.com/
Addicts Rehabilitation Center
(212)427-6960
2015 Madison Ave. New York, NY 10035

購入したCDの解説書に写っている教会と、実際に訪問した教会が違うので、
教会の住所を公開することは控えました。

  



Another New York Vol.36

NYでのゴスペル体験
by
kumiko

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