Vol.58 Tree of Music


 大きな木があるところに人が集まり、広場ができる。。。という話を聞いたことがあります。ロサンジェルスでの私のお気に入りの場所のひとつが、オルベラ街(メキシコ人街)。ここの中心の広場は、樹齢何百年?という大木を囲んでいつも人がいっぱいで、休日にはパフォーマーが出現。マリアッチやケーナの音色を楽しむことができます(ここで聞いた“ランバダ”は、妙に物悲しくて忘れられません)。そして、世界の中心には永遠に息づく木がある、という北欧神話の『世界樹』にも通じることですが、私の根っこ、中心は何だろう?と考えたところ、それは音楽でした。

 まずブロードウェイ・ミュージカル。“I LOVE NY”キャンペーンが定着してきた'86からほぼ毎年出かけ、たくさんの素晴らしいショーを味わってきました。最近の作品はますます多様化し、オペラそのもののB'way上演。シンガーとダンサーが分業し、台詞がまったく無いもの。また、パペット(操り人形)と人間が共演するユニークな舞台もあります。私が10年来追いかけているDIVA"べティ・バックリー"は、ソロCDを10枚出し、『Cats』でトニー賞受賞。グラミー賞ノミネートの経験もあり、昨年は『Legend of Cabaret Award』を受賞しています。彼女のライブコンサートを通じて、どれほど私の音楽の世界が広がったことでしょう。日本の女の子にファンが多いリサ・ローブ。情緒ある詩を書くジョニ・ミッチェル、マイケル・マクドナルド。伝統的なカントリーから流行のロック、ポップス。本業のミュージカル・ソングはもちろん、シャンソンまでも歌いこなし、私たちファンを飽きさせません。私が『Bottom Line』を知ったのは、彼女のライブがきっかけでした。今でこそ小スペースでのB'wayアクターのライブが盛んですが、彼女の初出演は'96。たぶんギャラを度外視し、観客との距離の近さを好む人なのだと思います。私もチャージ$30程度でミニマム無し、臨場感あふれるステージが楽しめるここを気に入り、4度(16回)にわたって足を運びました。

 そのボトム・ラインが閉店の危機にあると知り、思わずNYLYでお知らせしたのが昨年9月末のこと。その後、サイトを通じて継続嘆願の署名。NYの新聞、テレビでの報道。ここから世に出たB.スプリングスティーンやアーティスト達、ラジオ局の支援。また大手企業、AT&Tからの寄付もありました。しかし状況は非常に厳しく、2月の30周年を、無事迎えられるかどうか判りません。それだけに11月のNY行きでは予定が合わず、ライブを見られなくて残念でしたが、前まで行き感慨深く眺めてきました。(私のNY滞在中、ボトム・ラインを追い立てているNYUの、ジョン・ベックマン氏から「反対側の意見も聞いてくれ」というメールが届いていました。嘆願の署名をした際メールアドレスを記入したのですが、同じようなメールを受け取った方にはご迷惑をおかけしたこと、この場を借りてお詫びいたします。)

 また数少ない私のライブハウス経験ですが、初めて行ったのは『Blue Note』。名トランペッターのディジー・ガレスビーが出ており、フローズン・マルガリータでほろ酔い気分の耳に(思い切り膨らんだ頬っぺたと)威風堂々たるプレイが“NYの夜”を焼き付けてくれました。今は無きライブハウスでは『Sweet Basil』(名前を変えて営業しているそう)、ソウルフルな女性ボーカルを堪能した『Chicago Blues』、そしてNYLYでも惜しむ声が多かった『Smalls』。ここに初めて行った2000年12月29日は大雪に見舞われたこともあって、忘れられない夜です。ボトム・ラインのライブに行き、終わったのが明けて30日の午前1時。その日のホテルが取れず、また翌日帰国ということでヴィレッジでの夜明かしを決意、スモールズに向かいました。狭いドアを入り、階段を降りたところにいた男の人が「オレに$10払え」。(えっ。。この人に払って大丈夫だろうか?)と躊躇していると、隣りにいた日本人?の女の子が「彼に入場料$10を払ってください」。後で分かったのですが、アヤシかった彼がそこのオーナーでした。(笑。失礼しました!)中に入ると満員、1セット終わるのを待ち席に着きました。それまで行ったお店とは全く違っていて自由席で、アルコールを売るライセンスが無い為持ち込みOK、ボトルワインとグラス持参で楽しむグループもいました。『$10で10時間ジャズに浸れる』が売りで入れ替えも無く、体力さえあれば朝8時まで楽しめたわけです(さすがに深夜は、半分眠りながら聞くお客も多かったけれど、それもまた醍醐味かも)。私も旅の最終日、幸せな思い出に浸りつつも、頭はもうカラッポ。ただただ心地よい音に身をゆだね。。。ハッ!もう6時。そろそろ荷物を預けたホテルに戻って空港へ。。と店を出ると、外は真っ白!大きなボタ雪が降っていて、すでに7、8cmは積もっている。。。!早朝で人気が無く、車も少ない、一面真っ白の街を地下鉄駅まで歩きました。頭の中も真っ白になり無性に可笑しくて、空を仰いでハシャギながら。。。そんな強烈な出会いだったスモールズの閉店、本当に残念でなりません。

 最近になって開拓したのは、老舗の『Village Vanguard』。月曜日の“バンガード・ジャズ・オーケストラ”で、B.バックリーのバンドのサックス・プレーヤー、ビリー・ドリュースが出ていず残念でしたが(彼はバンガード...のレギュラー)、ベテランのジャズメンのどっしり落ち着いた音と、気持ちよさそうなプレイが印象的でした。そして先日行った『Jazz Standard』は、一昨年のNYマガジンとシティ・サーチの“ベスト・ジャズクラブ”に選ばれた旬のお店。私が長年利用していたホテルに近く、ヴィレッジとはまた雰囲気が違い落ち着いていて、女性一人の客もチラホラいました。1階はビーフリブの有名なレストランで、ジャズを聞きながら同じメニューを味わえます(美味!)。ライブはサックス中心で、ピアノ、ベース、ドラムの四重奏。なかなか渋いモダンジャズを聞かせてくれました。NYでは数少ない、女性ボーカルの出演も多いようなので、ぜひまた行ってみたいと思います。

 音楽があふれている街、NY。ストリート・パフォーマーや夏の野外コンサート。レストランの生ギターやピアノ演奏。劇場街のダイナーでは、アクターの卵たちのパフォーマンスも!高級ホテルのキャバレー、『Cafe Carlyle』『Feinstein's』。また、ヴィレッジの『Joe's Pub』もオシャレで素敵でした。オペラ、ゴスペル、クラッシック。。そしてもちろん、B'way(&オフB'way)のショー!!たとえ大切な場所が変化し無くなったとしても、あらゆる形で音楽が根付き、生き続け、成長している街。。。私の“音楽の木”は確かにここにある、そう思わずにはいられません。
2004.01.03

  



Another New York Vol.58
Tree of Music
Text Rie
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