Vol.65 ニューヨークの怪しいホテル A


Hotel Riverview http://www.hotelriverview.com/
 マーサが値上がりし、ミッドタウンのホテルも高くて手が出ず。新しいホテルの開拓中に3回泊まりました。ハドソンリバーを望むWest St.沿いのミートパッキング・エリアにあり、1906年創業のいかにも怪しげなホテルです。あのタイタニック号ゆかりの場所、生存者を収容していたとかで、ロビーの隅には当時の写真が飾られています。知る人ぞ知る有名ホテルらしく、あるB&Bのオーナーには「あの、$25ホテル?(もっと昔の料金)よく泊まったねー」、JOJOさんには「気合の入った即席NY者」(笑)とか言われました。でも始めからどこかマーサに近い匂いを感じ、いろいろ出た(!)にも関わらず決して“二度と泊まりたくないホテル”ではありません。

 足を踏み入れた時から何かその部屋は変でした。ここは最長3週間しか滞在できず、ベッドメイクは一切なし。新しいタオルやシーツは貰えますが、ゴミ捨ても各自で(これがホテル?チップもいらず、好きなだけ寝坊できたのはいいけど)とはいえ、妙に埃っぽい。ちょっと歩いたら、スリッパの黒い裏側が埃で真っ白に!いくらツインルーム(シャワー・トイレ共同)ウイークリー$280(’98)でもこれはさすがに..と翌日フロントに行きひと言、「Broom Please!」(変な顔されました(笑))今思うと、“開かずの間”だったのかもしれません。

 初めに気がついたのは数日後。部屋には鏡台がありその上に化粧小物を乗せていたのですが、奥に置いてあった2つのマニキュア(赤とベージュ)のうち、赤いビンだけが10cmほど前に動いているのです。「あ、ズレてる」と奥に戻したのですが、しばらく経つとまた移動しています。台が斜めとかビンの底が歪んでいるわけでもなく、引き出しの開け閉めで揺れるためでもないらしい。2つのビンの位置を換えてみましたが、同じく赤だけが動くのです。それも見ていない時に。。(目の前で動かれてもイヤですが)ここまで聞くと、皆同じく「Yさんの仕業じゃないの?」そう、友人と一緒だったのですが、そんないたずらをするタイプではなく、また彼女も“見る人”らしいので尚更あり得ません。この事を彼女に話すと「気にし始めると気になるから、やめた方がいい」「そうね」と納得。

 ところが帰国2日前の夜。。出たんです!ドアから入って寝入りばなの私の足元から廻り込み、ベッドの右側に入ってきたのです!!何故かその気配で“男だ”と感じました。「いやっ!」とっさにその場所を、バンバンバン!と3回叩きました(3回が有効と聞いたことがあった)。すると、す〜っという感じで抜けていったのです。その後は眠ってしまい、翌朝Yさんに話そうとも思いましたが“あと一日”と黙っていました。でもその夜、明かりを消したら眠れないんです!思い出して怖くなって..。思わず盛り塩を作って窓の側に置きました(厄除けですが、清めていない、それも機内食の残りの塩で?(笑))。それが効いたのか安心したからか、何事も無く翌朝を迎えました。結局、赤いマニキュアは置いて帰りました。Yさんに「置いていったのにスーツケースに入ってたりして」と脅かされましたが(やめて〜!)。マニキュア=女性のイメージでベッドの男とは結びつかなかったのですが、後で「あそこはゲイ(男の)御用達だよ(かえって女性は安全かな)」と聞いて思ったのは“もしや同一人物..?”マニキュアは戻ってはきませんでした(笑)。

 シャワー共同、ゲイ御用達ということで(?)よく廊下ですれ違っていた、腰にタオル一枚の男たち。Yさんはドラッグクイーンを見たそうですが、もしかしてそれは“Hedwig”だったかも。ヘドウィグとは、後に映画にもなった『Hedwig and the Angry Inch』の主役の名前。移民でゲイ、真実の愛を求めて場末の酒場で歌い続けるシンガーの物語です。この舞台を上演していたのが、リバーヴュー1階にあるJane Street Theatreでした。DVD化された映画の裏話に、この劇場と共にホテルも出てきます。もともと劇場ではなくボールルームだったためホテルの最上階(6階)に楽屋があって、舞台メイクのまま宿泊客とすれ違うこともあったとか。この作品、2年近くロングランしていたのに私は未見で、ちょっと残念です。

 6階に泊まった時のこと。荷物を運ぶリフトのみでエレベーターが無いため、毎日階段で昇り降りして大変でした(チェックイン、アウトの時は人も乗せてくれる)。ある夜ウトウトし始めると、ガサガサッ。。ガサガサッ。。と紙をかき回すような音が。耳を澄ます。。廊下や窓の外じゃない。。この、部屋の中。。!ゾッ、としました。薄明かりの中、音の方を見ましたが人影はありません(泥棒だと思った)。怖い。。でもこのままでは眠れない!そ〜っと起き上がり音のする方向へ。明かりをつけ“その場所”を見ると。。。ゴミ箱の黒いゴミ袋の底、二つの光る眼が!とその瞬間、サーッと飛び出し部屋の隅へ走っていったものは。。「ギャーーッ!!!」そう、ネズミでした。いくら古い建物にはいても不思議じゃない(ほんと?)NYとはいえ、ホテルの部屋に出るなんて!?確かにオバケも怖かった。でも私はコレの方が、もっともっと苦手かも。。。ふう。

 このホテル、今も変わらずあるはずです。ある時、チェックインのため入口へ向かうと「日本の方ですか?」と声をかけられました。その日本人女性はチェックアウトするところで「ここ確かに安いけどお勧めできませんよ」とささやかれたのです。そう、私もお勧めできません(笑)。一番安いシングルは$33/ウィークリー$161(’98)とはいえ、シングル階の廊下はまるで独房のよう。暗く狭く無限にドアが続いています(ツインのある2階はかなり違って広い)。ベッドは傾き、枕のスポンジはダンゴ状、原型を残していません。最寄りの地下鉄駅からは徒歩10分。夜はほとんど人気も無く、ちょっと怖いかもしれません。でも夜遊び派にはヴィレッジのバー、ジャズクラブへ行くのに便利です。またこの付近は、数年前から再開発中。お洒落なレストランやカフェ、ブティックホテルもオープンしているホットなエリアです。滞在中、ケビン・コスナーの映画撮影に遭遇しましたが、よくロケにも使われるという静かで綺麗な住宅街なのです。ミッドタウンでは見かけない、犬散歩の人。ハロウィンには工夫を凝らした窓の飾り付け、変装した子供たち。。季節や生活の匂いを感じます。West St.を南へ伸びる遊歩道は川沿いにベンチもあり、今は無きツインタワーを眺めることができました。

もう一度「あえてお勧めはしません」。でもちょっとの事では動じない、寝られればいい、または超ビンボウ。。いえいえ、好奇心旺盛な若者は、ぜひ“リバーヴュー体験”をしてください。きっとあなたの『もうひとつのニューヨーク』が見えてくると思います。
2004.05.30

  



Another New York Vol.65
ニューヨークの怪しいホテル A
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