Vol.06 2002年夏のニューヨークより


 あと約1ヶ月でワールドトレードセンターの崩壊から1年となります。
 
 毎日美しい青空だった冷夏の昨年とは違い、今年の夏は蒸し暑くてうだるような陽気です。それでも、もともと砂漠とオアシスを旅していた私にとって、まるで地中海を思わせるこの気候は昔の旅を思い起こさせてくれるので、「今日も暑くなる」と予報で聞くと、実はうきうきした気持ちになります。
 ところがクーラーによる電力消費量が限界で、これまでにもう3度も発電所の変圧器から出火があり、もっともひどかった時には半日、ソーホーからトライベッカにかけて地下鉄、信号をも含めた全ての電力がストップしてしまうといったことがありました。他にも水道管の破裂や、地下鉄の信号機の故障、落雷など、ニューヨークは毎日にぎやかです。まるでテロ以降ずっと張り詰めていたものがゆるんで、一気にぽろぽろとこぼれて表面に出てきているようです。
 その一方で、いろいろな事に無関心になってきているようなところがあって、昨年起こったことよりひどいことなど起こらないと思っているのか、あまりに傷ついて、些細なことだと何も感じないように感覚が鈍っているのか、もともといつもこうだったのか、判らなくなっています。それとも、これこそがクールなニューヨーカーの強さで、冷静に物事を見ようとする姿勢の現われなのでしょうか。

 とにもかくにも、1年が経とうとしています。街は毎日がお祭りのようににぎやかで、世界中からの観光客で溢れ、まるでワールドトレードセンターが無くなっているのがうそのようです。わずか1年で、ここまでニューヨークは立ち直りました。
 おかげさまで7月中旬から私の宿は満室状態で、9月いっぱい忙しい毎日になりそうです。大手の旅行会社がいまだに四苦八苦していると聞くのに、私達がこうしてやれるのは、好奇心旺盛で、勇気ある皆さんのおかげです。
 皆さんが、ニューヨークにやって来てくれたからです。
 親や上司にいろいろ言われた人や、嘘をついて、あるいは内緒で来られた方がいます。一緒に来る予定の友達がキャンセルし、一人で来なければならなくなった方はかなりの数でした。思い切って会社を辞めて来られた方や数年ぶりの長期休暇を取った方は、今のこの時期のニューヨークだからあえて来たと言われました。
 飛行機が無事に空港に着くまで、これほどの緊張と不安とプレッシャーで来なければならない旅があるのだろうかと思いながらも、それでも行かなきゃいけない、行ってみたいという気持ちで来て下さった沢山の人に、本当にお礼を言いたい気持ちです。

 本当にありがとうございました。
 
 ここを訪れたことには、ニューヨークとあなたの両方にとって何かの意味があったはずです。
(2002/08/14)
 B&B-The One Hundred のオーナーのYOKOさんから頂いたメールをこのコーナーでは掲載させて頂いています。

▼ YOKO's Profile
ブルックリンにあるB&B、ザ・ワンハンドレッドのオーナー。アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパを旅した紀行画家。

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