Lower East Side Tenement Museum
  90 Orchard St., new York , NY 10002
  TEL 1.212.431.0233 FAX 1.212.431.0402
  Charge $9 adults, $7 students & seniors
  http://www.tenement.org

ゆにこん 銀河系  Registered 17 November, 2001
Title 『The tenement building is open by GUIDED TOUR ONLY! 』
 美術館や博物館が私たちを引きつけるにはいろいろな要素があると思います。箱モノ・いわゆる建物自体がすでに有名である場合(例・グッゲンハイム)、収蔵作品の質と量(例・MET)、立地条件とコンセプト(例・MoMA)など。普段アートに興味がなくても、ガイドブックに書いてあるしせっかくNYに来たのだから話の種に行ってみようかと思わせる所ばかり。多くのミュージアムではガイドつきツアーも企画されていますが、いずれにしてもそこでは展示作品を静かに鑑賞するというスタンスが基本です。単発的にはギャラリー・トークやギャラリー・コンサートも企画されますが。アバンギャルドなギャラリーならアーティストが意図的に観客自身を作品の一部にしてしまう場合だってあります。

 でもこのミュージアムはガイドツアーが売り。そうとは知らず「大人1枚お願いします」と言って手にしたパウチッ子済みの定期券サイズのチケット(ツアー開始時に回収)には「ツアーは○時開始。集合場所はこのショップ」とありました。しまった!METならまだしもローワー・イーストサイドに各国語ガイドのツアーなんてあるわけない。ひょっとして英語オンリーじゃない?そういえばショップの隣に博物館らしきものなんてないし。じゃあ一体何処へ連れて行かれるの?ショップの奥のカーテンで仕切ったエリアではビデオ上映してるみたい。しかしあと10分でツアーが始まるし、スタッフは親切だしもう引っ込みがつかなくなったので思い切って初のガイドつきツアーに参加しました。
 
 参加者は全部で10人ちょっと。私から見てみんな外国人ばかり。しかもアジア人がいない。うわー、これから暫くの間英語の暴風雨に吹かれるのかと思うと冷や汗たらたら。集団行動が苦手な私ですがこの時ばかりは一人で心細くなりました。やがて何故か光源の強そうな懐中電灯を手にしたキュートなガイドさんが登場。簡単な挨拶とツアー概要説明の後、いきなり“Tenementって何だかわかりますか?”と全員に質問。これ位の英語ならわかるけど言われてみればテネメントが何かはわからない。どうやら家屋、住宅、住みか、アパートといった意味のようです。この後ゾロゾロと5〜10分位ショップの周囲のオーチャードストリートを散策し、1900年前後にローワー・イーストサイドに来た移民のアパートの建築様式を見て回りました。お楽しみはこれからだ。今は廃屋と化したとある建物が実際に彼らが住んでいた場所で、取り壊すことなくそこを博物館にしてるのです。なるほどこれがtenement building. 1時間15分のツアーはこの建物に実際に住んでいた3つの家族の新天地での生活を辿ります。
 
 この老朽化した建物は博物館になったからといって新しく改装されたわけではありません。ほとんどの部屋は家財道具や衣類などが当時のままの状態で保存されています。今から100年も前の話ですからもちろんエレベーターもエスカレーターも無し。トイレ(観光客用ではない)も各階ではなく建物の中に男女別に2つあるだけ。照明はろうそくかカサの無い暗い裸電球のみ。これで懐中電灯の謎が解けました。一つ一つの部屋も狭くてせいぜい6畳位でしょうか。狭いながらも楽しい我が家という言葉もありますがやっぱり狭い。今にも抜け落ちそうな階段の幅は50センチ位でそのきしむことといったら。一足歩く毎にギギ−ッ!!! 公共の建物として防災計画やら非常災害時の対策はどうなってるのかなどと余計な事まで考えました。こういう事もツアー中に質問していいのでしょうけど。朽ち果ててガランとした部屋の雰囲気、まるで霊でも出てきそう。うわ〜恐い、おどろおどろしい。絶対にいいお天気の昼間に来たい所です。
 
 ガイドさんは一部屋ごとに部屋の説明をします。その部屋がどういう風に使われていたのか、当時の生活様式はどうだったのか、そこに住んでいた家族のその後の人生を引き伸ばした何枚かの写真を回しながら今に生きる私たちに語ります。こんな時語学力に自信があれば他の人みたいに思いっきり質問できるのにちょっと残念。でもこういう所はガイドさんなしで入れてくれるわけないですよね。やっぱり参加してよかったです。
 
 こんなにも朽ち果てた建物だけど、そこには確かに人生があった。自分の生まれた国から遠く離れて新大陸にやって来た人々。ここでの生活は夢に描いていたものとは大きくかけ離れていたかもしれません。でも家族で仲むつまじく堅実な毎日を営んでいた様子がよくわかりました。アメリカ人になる為に。写真に写っていた彼らの子孫が今どうしているかはわかりません。ちゃんと説明してくれたかもしれませんが解説が70%位しか理解できなかったので。でもこれまでおしゃれで有名でカフェとショップがあってという定番ミュージアム中心だった私はここで新境地を見つけたような気がします。そしてマイナーだけどこのミュージアムで、この企画に誇りをもって仕事をしているスタッフの努力に胸が熱くなりました。
 
 ところでこのミュージアム、とにかく体力が要ります。何たって英語オンリーだし建物の性格からしてベンチなんてあるわけない。1時間半近くずっと立ちっぱなしなのです。60〜70歳代のご夫婦はさすがにつらそうでドアにもたれてました。もたれられたドアはもちろんすごい音をたててきしみます。デイパックの若者2人組も終盤はべたっと床に座っていました。
 
 この他にも以下の種類のツアーが曜日や時間毎に設定されています。全てガイド付きでいずれも最大15人まで。又パンフレットを見ると季節にもよりますがツアーではなく場所を変えてプロによる劇もあるみたいです。次回はこの体験を活かして再挑戦したいです。ちなみにショップでは移民が自分の母国のテイストを生かした小物やアクセサリー、写真集や本を扱っています。

 ・Visit the Confino Family Apartment (45min.)
  ・Inspect This!  The Tenement Inspectors' Tour (1hr.)
  ・Neighborhood Heritage Tour (1hr.)
 
PS.ここからDelancey St.という地下鉄の駅までたった5分位でしたが歩きながらちょっと固まりました。観  光客らしき人は皆無だし、道路には多量の紙屑が散乱してるし、道端でいい年をした男性が思いっきり飲  んだくれてるし。やむを得ずそこを通る時はわざとイカメシイ表情をしながらバシバシ早いスピードで歩き  ましょう。もちろん暗くなる前にね。その為にも最終回ではなく特に秋冬はもうちょっと早い時間にスター トするツアーをお勧めします。

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