Vol.01 チャイナタウンでDon't miss it! (前編)


 せっかくNYに来たんだもん。外国に来てまで日本食なんか食べたくない。

 ただただNYが大好きで休暇をとって遊びに来てるだけなのに今ではアメリカ人の友人からも “Welcome back! ”だの“America miss you.”だのと身に余る光栄なセリフを言われるようになった私。それなのについ2年位前までこんな風に思ってました。日本人以外の何者でもないくせに何と言う高慢な考えでしょう。今にしてみれば逆食わず嫌いなのはこの私でした。食べ物担当大臣様に弟子入りしなくては!

 でもカッコつけてレストランでいざ何かを注文しても半分以上残してしまいます。ああ、もったいない。ドギーバッグにしてもらっても結局は捨てるだけ。初ギリシャ料理だったのに。

 たとえば、あるダイナーでこわごわ頼んだガーデンサラダ。きっと契約農家の庭でとれた完全オーガニックのおしゃれな野菜かも。しかし実際出てきたものは、どうだ!文句あるか!This is 野菜.と言わんばかりのダイナミックな野菜盛り合わせ。野菜そのものも、一つ一つの素材の切り方も千切りとかいちょう切りとかそんな繊細さは全くない。もしかしてブツギリ?出刃包丁でもなきゃこんな大きな野菜は切れない。こんなはずじゃなかった。

 サラダを食べるのにナイフを使うのも始めての体験。ひょっとしてマナー違反ではないかしらとちょっとヒヤヒヤしました。でもとにかく食べやすいようにやっとの思いで小さくカットしついに口の中へ入れてみた。おもむろに歯で噛んだ次の瞬間、口腔内で「バリバリバリッ!」と異常な音が。歯槽膿漏予防歯磨きのCMではありません。それは野菜が噛み砕かれていく音でした。
    
 決して私の歯がおかしいのではなく、こうまでしないとあの野菜の塊が喉の奥に入っていかないのです。   食べ物はまずよく噛んでこそ胃や腸でスムーズに消化され一日のエネルギーになるのだ。そうして口や顎をしっかり動かすことで人間のあごも発達するのだ。直立歩行の人類が今日まで骨格に大きな変化を遂げたのは歴史が証明している。だいたい近頃の人間はろくに噛みもしないうちに食事を飲みこむ。にっくきマックのマックシェイクなんて最たる物だ(何故にっくきなのかは後述)。麺類も噛むどころか流し込んでる始末だ。長いものには巻かれろったってそりゃ次元が違う!(読者の皆様、すみません。次元の違う話をしてるのは私でした)。

 一旦口に入れてしまった物を出すわけにはいかない。こうなったらガーデンサラダとやらを完全クリアするのが先かそれとも私のあごが外れるのが先か二つに一つ。それに私は今ここでサラダごときで満腹になるわけにはいかない。だって他にもスープとスパがあるんだもの。こんな時に限ってウェイターが“Is everything OK?”と笑顔を振り撒いてくるんです。
    
 日本人の基準から言ってアメリカででる料理(?)はなんでも大味すぎる。甘すぎる。一つ一つのパーツが大きすぎる。しつこすぎる。量も多すぎる。なんでも too much なのです。

 ずっと以前の話ですが某州にてブラッドにそれを言ったら「あ、そ。じゃあ君の分はこれね。」目の前に出されたのは直径20センチくらいのペット用のお皿にポップコーンがたったの3粒。ユーモアまでも too much.でもそれってよく考えたらあんまりじゃない?普通初対面の外国人にこんな事言いますか?こんなのユーモアでもなんでもない。

 海外に行った日本人のマスト・アイテムとも言うべきこのセリフがその瞬間ついに私の頭をよぎりました。「日本人をバカにするな。」日本人全体がバカにされたのか、はたまた私個人がバカにされたのか。それにしても噂によると彼は大学卒業後、ピッツバーグの空港職員になったって聞いたけど真面目に働いているのかしら?人ごとながら心配です。

 万国共通のマックに入っても「いらっしゃいませ。こんにちは。」なんて言われた事は一度もありません。それどころかその横柄な態度は何?と言いたい。にっくきの理由はここにあり。日本のマックなら漏れなく付いてくる店員さんの笑顔は何処へ?フィレオフィッシュを2つ頼むとどうして4つもでてくるの?私の発音が悪いのか(はっきり言ってそれが最大の原因)、2つ1組で計4つなのか、もしかして今だけ特別なキャンペーンなのか・・・。♪世界のこっとばー、マクドナ−ルドー。ホンマかいな?(急に関西弁になる私)世界の言葉はエスペラント語よ。チャイナタウンのマックは看板に○○○って漢字で書いてあるのは有名ですよね(皆様、またしてもごめんなさい。この3文字は日本で使わない漢字なのでPCで変換不可能です。でもガイドブックのチャイナタウン紹介ページに載ってる事が多いです)。
    
 こうしてハンバーガー4つの疑問は解けぬまま、しかも「私は4つも頼んでいません。」ときっぱりとした態度にでることもなく何もかもめんどくさくなってそのまま店を後にしました。これではいけないとわかっていてもここ一番の時になるとやはり私もおとなしい日本人の1人でした。もうマックなんか嫌い!

 ガイドブックにはマンハッタンのレストランが数多く紹介されています。最近ではカリスマシェフリストもある。そんなシェフのいる高級レストランなら質・量・サービスのどれをとっても満足いくに違いありません。 しかしここNYでは客が店を選ぶ前に店が客を選ぶかも。

 そうだ、ロバート・デニーロ様のNOBUなら何とかなるだろう。でもそんな超人気レストランは1ヶ月先まで予約が入ってるはず。まずは予約のいらないNOBUネクストドアで予習しようかしら。それにNOBUはおしゃれな人ばっかりだから私なんかがいったら浮いてしまうかも。こんな風に何だかんだと勝手な理由をつけていわゆる高級レストランに入ったことはありません。
    
 そんな時、吸い寄せられるようにしてつい入ってしまった日本料理店。それもそのはず。万歩計の数はもう15000歩をクリア。そう、「日本食なんか」と見栄を張ってる場合じゃない!日本食を笑う者は日本食に泣くのだ。やっぱ日本人は寿司よ!お味噌汁も付いてくる。お茶だっておかわりしていい(らしい)。しかも寿司桶と湯のみ茶碗と味噌汁のお椀の配置が美しい三角形をなしている。小学校の給食の時間に習う三角食べはここNYでも生きていた。日本料理のコーディネートはこーでねーと(だんだん言葉使いが悪くなってきました)。
 
 レストランとしての接客態度は別にして味に関して言えば日本円にしてせいぜい2500円程度でこんな美味しいものを食べれるなんて・・・。もう見栄を張るのはやめよう。日本食万歳! アッパレ・フジヤマ!
    
 ・・・と思ったのもつかの間。よく考えたら$20あればデリで思いっきりいろんなものが買える。NYでは寿司ライフをエンジョイしてきたけれどここらでいいかげん節約しなければ。もしかしたら$20の食事といったら一般ピープルにとってはかなり贅沢なことではなかろうか。これではいけない。ちょっとは節約してその分他に還元しよう。でもチープでもなくジャンクでもなくリーズナブルなコスト・パフォーマンスの高い食事はできぬものか。

 そんな時私の中の眠れるアジアの血が目を覚ましたのです。チャイナタウンならきっと安い・早い・うまいだろうと。次の瞬間メトロカードとサブウェイマップを握り締めて地下鉄の駅に向かう私がいました。気分はもうルーシー・リュ−よ。あれ?彼女って確かニューヨーカーだったような気が。まあいいや。アジアの純真。東洋の真珠。思い出せばアジアをイメージした言葉ってたくさんある。上から読んでもアジア,下から読んでもアジア。さよならザガット。さよならミシュラン。
    
 そんなこんなでどうでもいいくだらないことを考えつつスムーズに地下鉄を乗り継いであっという間にチャイナタウンにたどりつきました。あとはもう人ごみをぬってどこかのお店にはいるだけ。ガイドブックに載ってる有名なところでなくてもいい。ひえ〜。アヒルが集団でぶる下がってる・・・。

 こうして今年のマイ・ブームであるワンタンスープストーリーが突如その火蓋を切って落とされたのでした。え?あのサラダ?もちろんスパと一緒にドギー・バッグにしてもらいました。
    To be continued.




 Yes, I feel NY ! Vol.01
by
Scully

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