Vol.12 震えるケータイ


近頃BBS・Summer of Loveには、海外での携帯電話使用に関する御質問が数多く寄せられます。そのほとんどが観光や留学など、特にSocial Security Numberをお持ちでない方で、かく言う私もone of themです。となるとやはりマイプリペイド携帯ですね。このコラムのVol. 8<ケータイリストへの道>では、一昨年の夏、私がNYでようやく携帯デビューを果たした模様を御紹介しました。あれから1年半。今度はその後日談として、その後2回のNY滞在の携帯模様をお伝えする事を通じて、マイ携帯購入を検討されてる方の御参考になれば幸いです。まずはその前編です。

日本でこれだけ携帯が発達したというのに、ついこの間まで私は携帯を持つ気すらしなかった。無くったって何とかなる。無ければ無いでやってきた。しかしある時NJに数日間滞在した経験から、旅行者であっても携帯の必要性や便利性を痛切に感じ、どうせNYで携帯デビューするならレンタルではなくマイ携帯をと思い、その筋に詳しい友人達の多大なる協力を得て、ようやくデビューに漕ぎ付けた。初めて持ったこのおもちゃにメッセージが入ってるのが嬉しくて、受信着信共に通話料が掛かると知りながら聞き古した短いメッセージを懲りずに聞いた。おかげで最初の購入時についていた無料通話分などあっという間に消化する始末。レフィルカードを購入し、カスタマーサービスに電話して無事に電話代をレフィルできたのも嬉しかった。

そしてその年2002年もあと数日で終わろうとしている12月。Voice Streamは完全に社名変更し、T-Mobileに新しく生まれ変っていた。4ヶ月ぶりのNYで、果たしてこの携帯番号はまだ生きているのだろうか。とにかくレフィルカードを買わなくちゃという一心で私はタイムズスクエア近くの某コンピュータ屋にGO。店に入るとたまたま応対してくれた店員が、広い店内の隅のカウンターへと手招きする。何もそんな端っこへ行かなくてもいいじゃないの。すると彼はレフィルカードを出すだけではなく、カスタマーサービスへの電話から何から何まですべてやってくれ、もう完全に使える状態にまでしてくれた。その時は内心、めんどくさい事は全部この人がやってくれる。助かったとまで思ったものだ。しかしその代償は大きかった。

自分の名前は〇〇。(名乗らなくてもいいから名札でもつけてよ。)同時に差し出された手。(この場合は握手なんてどこまでも単なる挨拶に過ぎない。しかしむげに断るのも失礼かもと思う。)こちらも仕方なく右手を出す。それをきっかけに相手の質問はエスカレートしてきた。君の名前は何?(更に仕方なくファーストネームだけ言ってしまった。)誰とNYへ来たの?(誰でもいいでしょう。)どこに泊まってるの?(あなたに言う必要は無い。)自分と友達になりたいか?(なりたくない。自信過剰じゃないの?)ボーイフレンドはいるのか。(放っとけ、そんなの!)今日、ランチはどうか。(これからショーのチケットを買いに行くのだ。)ではディナーはどうか。(そんな暇無い。)じゃあ明日はどう?(私は忙しい。)明日はオフなんだ。(あなたの休みなど誰も聞いてない。)いい加減しつこいので、“No morequestions.  I have to go now.  Check please!”とわざと大きな声でいうと敵はようやく諦めた様子で、すぐにレジへ戻って行った。しかし最後には店の名刺の裏に自分の名前と携帯番号を書いたものをよこし、「いつでも電話してくれ。」ときた。いらないいらない、そんなのと思いつつ、一応後日何かあった時の証拠用に私はその名刺をバッグに放り込んだ。そしてそれっきり名刺の存在など忘れてしまった。

しかしそれだけでは終わらなかった。滞在中にBwayでショーを観ている間、私は携帯の電源を切らずにマナーモードにしていた。マナーモード中に電話がかかってくると液晶画面には鮮やかな青いバックライトが甦る。海外の携帯のマナーモードは半端じゃない。機種にもよるが、強烈なブルブル度は小型マッサージ器としてもいける。なるほどアメリカでは携帯と脳腫瘍の因果関係が問題提起されるわけね。ショーの最中、何となくカバンの中がブルブルいうので、こっそりバッグを覗いてみた。すると暗闇の中で激しく動く謎の物体が怪しい光を放っているではないか! これはもう電話ではなく立派なイキモノだ。思わず映画エイリアンで宇宙飛行士のお腹を突き破って出てくる小型エイリアンを思い浮かべた。今はショーの真っ最中なので電話に出るわけにいかない。しかし、10分後、20分後と携帯は時間をおいて何度も無言の唸りをあげる。振動がバッグを通じて膝にジリジリと伝わってくるのだ。お母さん、怖いよ。。。まさに震えるケータイ。聞いただけでホラー映画のタイトルのようだ。こんなにしつこく電話をしてくる相手は誰? それとも友人から緊急の用件? でもこの番号を貰ってまだ4ヶ月だし、それ知ってる人間は限られている。ショーが跳ねて劇場の外に出た瞬間再び鳴り始めた。その時既に11時。こうなるともう恐怖としか言いようが無い。わずかな心当たりといえば、アレだ! ふと昼間貰った名刺を見た。携帯の着信履歴に連続5回も残っていたその番号は、コンピュータ屋の名刺の裏に書かれた番号と見事に一致していたのだ!!!

その時思い出したある記事。宿泊先に帰り、取るものも取り合えずガイドブックを見たら、なんとその店でクレジットカード被害にあった人の投稿を発見した。このNYLYでもその店で被害を受けた人が何人かいたように記憶している。レフィルカード購入時に自分の携帯が相手の手元にあるのがネックとなって(いわゆる人質ではなく、携帯質)、矢のようなプライベートな質問を何とかはぐらかすのは簡単な事ではなかった。ようやく質問を打ち切って、カード払いゆえ、サインする前にきちんと金額を確かめた事と、しつこくかかってくる電話に一度たりともでなかったのは不幸中の幸いであった。タイムズスクエア近辺のコンピュータ屋は確かに要注意と身をもって知ったこの日。それにしても暗闇で怪しい光を放ちながら不気味に唸りをあげるイキモノの恐怖は、あれから1年経った今でも私のトラウマとなっている。震えるケータイ。。。
2004.01.26




Yes, I feel NY ! Vol.12
Text by Scully

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