Vol.13 その後のケータイリスト


プリ携で誰もが最も気になるのは、料金体系よりも番号の有効期限だろう。通話料金は安いにこした事はないが、最初の購入時にまとまった額を払うだけで、基本的に継続して使っていればあとはレフィルカード代のみ。しかし継続して使うほど年に何度もNYへ行けるわけも無く、せいぜい2回がいい所だ。かといってせっかく海外で買った携帯なのに、たった一度の旅行で番号がボツになるようでは勿体無いではないか。

2003年12月。まだあの電話番号は生きているのだろうか。1年間あの携帯を全く使っていなかったと言えば嘘になる。仕事で度々シリコンバレーに出かける兄に2度貸していたのだ。兄は兄で、この携帯のカバーエリアを確認済みらしい。しかしある事をきっかけに、以後私はそれを貸すのを止めた。本来パーソナルアイテムを共有する事自体が変なのだ。もしそのまま貸し続けていれば、もちろん何ら問題なく同じ番号が使えただろう。

クリスマスのNYの道路は怖いくらい空いていて、30分ちょっとでホテルに到着。チェックイン後、手早く荷物を整理し、早速携帯を試したらやはり使えなかった。液晶にはEmergency Onlyと表示されている。今までこんな表示は一度も出なかったのでちょっと嫌な予感がした。しかし気を取り直してレフィルカード裏面のスクラッチ部分をコインで擦りながら、T-Mobileカスタマーサービスにダイヤル。到着直後からすぐに携帯が使えるように、前回のNY最終日に$25のレフィルカードを買っておいたのだ。電話の向こうは全て自動音声で、通話料をレフィルする人は〇番、有効期限と残りの通話料を知りたい人は〇番、オペレーターと直接話したい人は〇番、というようにガイダンスがある。それに従って自分の番号やレフィルカードナンバーなどを入力し、その都度最後に#を押せばいい。最後に残りの通話料と有効期限が聞こえれば終了。けれどもやはり液晶はさっきと同じ表示だし通話もできないまま。たった今追加した$25はどうなるの? その他の機能には何ら異常がないので、壊れているとは思えない。こちらでは普通の携帯を購入すると日本のようにその場で使えるのではなく、丸一日たった次の日に使用可能になるそうだ。プリ携もそうなのかどうかわからないが、とにかく24時間後の明日の昼まで待ってよう。それまではこれまた前回のNYで予め買っておいたCalling Cardでしのぎたい。

しかし翌日のお昼近くになっても事態は変わらなかった。やはりSIMカードを買うしかないか。怪しい店は問題外として、携帯なら何でも扱ってます屋ではなく、きちんとした正規代理店へ行こう。第一店構えだって違う。正規代理店はその会社のイメージをうまく取り入れた明るいシンプルな内装だが、携帯何でも屋はごちゃごちゃしているので一目両全だ。しかし私がアテにしていた最寄のT-Mobile正規代理店は何とFor Rent!  Oh, my God!

その日の午後はNY参りの際には必ず足を運ぶユニオンスクエア近くのフォーブス・マガジン・キャラリーズへ地下鉄で行き、そこから5番街を上ってミットタウンに帰ってくることにした。ストリートにして約30ストリート分あるがNYは歩くだけで楽しい。その通りには私の大好きなBath & Body Works, AVEDA, Originsの3つがお互いに近い位置にあるし。すると何と目の前にT-Mobile屋さんがオーラを放って出現した!これぞ神の助けと一番近くの店員さんに事情を話したら、まずは店の奥のサービスカウンターへ持っていくよう言われ、列に並ぶ。ようやく私の番がきたので係のモーガン・フリーマン似の男性につたない英語で同じ説明をしたら、10分程度のやり取りの後、電話番号の有効期限が切れていて、現在は違う人がその番号を使ってることが判明した。つまり私は見ず知らずの他人に$25の通話料を寄附したことになる。泣。仕方なく新しい番号を貰う=SIMカードを買いなおす事にした。私の落胆振りに同情してくれたモーガン氏は親切にもカウンターから出てきてくれて、最初に私が話しかけた女性店員に事の次第を説明してくれた。女性は慣れた手つきでコンピュターに向かい、SIMカードの値段がこれほどかかるけどそれでいいかという確認と、それに付随する無料通話分など事細かに説明してくれた。丁寧に説明してくれればくれるほど、彼女のプロ意識が伝わってくる。パッケージを破り携帯の裏の蓋を外し、手際よくSIMカードをセットしながらこう教えてくれた。「あなたがそんなにNYに何度も来てるなら、次回もこの番号を使うために帰国の前日までにかならず通話料をレフィルなさい。有効期限は更に1年伸びますよ。」 手続を全て済ませた後、新しい番号を告げるメール着信音が鳴った。

そこで私はダメ元で、自分がどこかの誰かさんに寄附してしまった通話料をこの新しい番号に移し変えることはできるかどうか聞いてみた。証拠としてレフィルカードも持ってきたのだ。すると彼女は、できるかもしれないのでカスタマーサービスに電話してみましょうとお返事。もし日本なら店の人自らが該当部署に問いあわせて何とかしてくれるだろう。てっきりそのつもりでいたら、彼女は確かに電話番号を回してくれただけで受話器を私に渡す。ひえ〜! 自動音声なら面倒になって受話器を置く事もできるけど、ナマの人間相手にこの複雑な状況を最初から最後まで英語で説明しろというの? もう帰りたいよ〜。幸い先方には電話が集中しているらしく、何分待ってもバックミュージックが流れるだけ。女性はそれなりに気を使ってくれて、他の客の相手をしながら、「相手は出ましたか? 音楽が流れてますか?それともなにか宣伝が流れてますか?」など時々声を掛けてくれる。やっと相手がでた! すごい早口英語だ! でもこうなったら引き返せない。こうなったら英語云々よりも頭の中で物事を順序だてて説明することにした。さらに新旧の電話番号とレフィルナンバーも告げる。長々と、しかもしどろもどろの英語なのに、顔も知らない相手はその都度相槌をうってくれる。一通り話した後、心配なのでこう言ってみた。「話が錯綜していますが、私の言わんとする事をわかって下さいましたか?」。先方、「ええ、よくわかりましたよ。貴方が言った番号も全部控えましたし。今から$25分の通話料を新しい番号にcreditしましょう。残高と有効期限も調べますから暫くお待ちください。」 It's a deal!

こうしてすべてが終わった。店を出る前にモーガン氏と対応してくれた女性に再度礼を述べると、女性はとにかく帰国前日にレフィルするといいですよと念押ししてくれた。よく見かけるT-Mobile屋さんだけれど、この店での一つ一つの仕事に対する誠実さ、客が今何を望んでいるのか積極的に掴もうとする姿勢を垣間見たような気がする。店には結局1時間もいただろうか。もちろんその間中英語をしゃべっていたわけではないし、問題は言葉云々ではないが、それでも何とかやりとおした満足感で一杯だった。たかが携帯の番号を貰うだけなのに、傍に誰一人助けてくれる人がいない心細さ。しかも仕事については完全分業制のアメリカでそれぞれの担当者に自分の状況を説明し、思いもよらない交渉が成立したその過程を通して私は大きな何かを得たような気がする。よくここまで頑張ったね、Scully。このNYでちょっとは進歩したね。1年ぶりのNYへお帰りなさい。


(追記/その後のその後のケータイリスト))
 携帯カバーエリアを確認した上でウェストコーストで私のプリ携を使っていた兄は、画像の通り、マンハッタンには無い現地のセブンイレブンで買ったカードをレフィルしていました。どちらもカスタマーサービスの番号は同じです。レフィルカードの有効期限(新品のカードを最初に使い始めた後の有効期限が発生します。)は購入した額によって違うので、少額のカードを買って小出しに追加する方がいいようです。これは買いだめしておいても大丈夫。1分当たりの通話料は、レフィルカードの裏面に大体の目安が書いてありますが、私はあまり気にしていません。

 プリ携を何ヶ月も使わなかった結果としての電話番号自体の有効期限ですが、今回ショップで女性店員さんがアドバイスしてくれた内容をもう少し詳しく御説明します。SIMカード購入に付随する$30分のInitial Prepaid Airtime(無料通話分)は3ヶ月なので、3ヶ月以内にあなたがまたNYにくるならいいけれど、そうでなければ帰国前日までにレフィルすれば1年後まで有効期限が延びますよ、という意味でした。これについてはもちろん既定があるとは思いますが、その時はレフィルの金額等何も言って無かったです。また、ある程度継続して使用しているとEasySpeak GoldRewardsといって通話料が安くなったり、レフィルした金額+その50%相当の無料通話料あげます等の特典があり、前回の使用時にはそれに達する直前に私の携帯宛にその旨を伝えるメールが来ました。

 さて、アドバイス通り大晦日の夜手持ちの$25分をレフィルしたら、電話の向こうで確かに有効期限は2004年12月31日、残高は何ドル、と告げる声が流れてきました。次の瞬間? もちろんタイムズスクエアのボールドロップ!!!
2004.01.26




Yes, I feel NY ! Vol.13
Text by Scully

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